下部消化管班

臨床グループは、上部消化管下部消化管消化器腫瘍肝臓胆膵消化器内視鏡と6つの班に分かれて外来・病棟業務、臨床研究に取り組んでいます。いずれの臨床グループにも経験豊富な専門医が多数そろっており、症例も多岐にわたります。病棟業務は専門スタッフ、卒後5-7年目消化器内科医師、後期および初期研修医、医学生で屋根瓦のチームをつくり患者さんの診療にあたっています。



下部消化管班

特徴

下部消化管疾患の診療は、各診療科(消化器内科、一般消化器外科、放射線科、病理診断部、腫瘍センター、内視鏡センター)と共同で消化器クラ・消化器外科、放射線科、病理診断部、腫瘍センター、内視鏡センター)と共同で消化器クラスターとして行っています。特に一般・消化器外科とは主要な病棟を共有しており、科を超えた医師同士の速やかな意思疎通を図っています。腫瘍性疾患は、内視鏡治療から外科手術、化学療法、放射線治療まで多方面から包括的に、消化器クラスターとして治療を行っています。 

当科の最大の特徴は、全国的に見ても炎症性腸疾患(IBD)の患者さんが非常に多いことです。専門外来は毎日開設され、免疫統括医療センターではリウマチ内科・皮膚科・整形外科・リハビリテーション科とも連携し、クローン病や潰瘍性大腸炎などの患者さんに対する最先端の治療を行っています。国内外で進行中の治験や、漢方に含まれる生薬(青黛)を用いた新たな治療法の開発にも精力的に取り組んでいます。その一方で、5-ASA製剤やステロイド・免疫調節薬といった従来からの治療も重要と考え、既存薬から最新の分子標的治療薬まで幅広い治療を駆使して、診療エビデンスの構築についても積極的に取り組んでいます。また、自律神経や腸内細菌領域で著名な成果を挙げている金井隆典教授、臓器の体外三次元培養方法である「オルガノイド」技術を開発した医科学教室の佐藤俊朗教授の指導のもとで、臨床的な有効性評価と並行して基礎医学的な研究も行い、新たな治療法の開発を目指しています。 

また、潰瘍性大腸炎関連発癌の内視鏡診断において世界をリードする岩男泰特任教授、タクロリムスの開発を牽引した緒方晴彦教授を始めとして、炎症性腸疾患診療における日本のトップランナーの医師が複数在籍しており、これらの指導者と身近に接することでトップレベルの診療を体感できます。臨床現場では、卒後10年目までの若手の医師が20年目までの中堅医師の指導のもとで主力として活躍しているため、若手医師が活躍する機会に恵まれています。 

豊富な症例、経験豊富なスタッフ、洗練された従来治療、革新的な治療法に若いうちから接することで、幅広い視野を持ったトップリーダーを育成します。

対象疾患

腫瘍性疾患

大腸がん、潰瘍性大腸炎関連腫瘍、悪性リンパ腫、家族性大腸腺腫症、Peutz-Jeghers症候群、消化管間質腫瘍(GIST)など

非腫瘍性疾患

潰瘍性大腸炎、クローン病、腸管ベーチェット病、過敏性腸症候群、アレルギー性紫斑病に伴う消化管病変、非特異性多発性小腸潰瘍症(CEAS)など

診療実績

炎症性腸疾患外来 (月)~(土) 毎日開設 

患者数 潰瘍性大腸炎 約2300人、クローン病 約850人、腸管ベーチェット病 約60人

教育

当科では入局2年目(卒後6年目前後)から内視鏡センターと連携して大腸内視鏡検査枠に配属され、挿入手技を学びます。通常の大腸ポリペクトミーやEMRは1年以内に施行可能なレベルに到達します。症例の質・量ともに豊富なため、すでに大腸内視鏡の手技を習得されている先生でも満足のいく研鑽が可能です。 

炎症性腸疾患の診療は全国から集まる入院患者さん全症例および治療に難渋している外来患者さんについて週1回の症例検討会議を行っています。ここでは、卒後5年目の若手医師から卒後15年目以上の専門医師が一堂に会し、入院症例ならびに診療に難渋する外来症例を中心として、エビデンスに基づいて方針を議論します。当院では、通常の治療戦略だけでなく、難治症例に対する戦略を求められるケースも多いため、1-2年間あれば診療の基礎から最先端まで体感することができます。

研究

消化器内科では、免疫・再生・腫瘍・機能のユニットに分かれて多彩な範囲の研究を行っています。ここではテーマに応じて、肝臓グループや上部消化管グループと共同研究を行い、さらには皮膚科や精神科とも共同研究を行うなど、必要に応じてグループの垣根を超えて双方向性の連携を行っています。 免疫グループでは、腸管免疫の研究で世界的に高い評価を受けている金井教授が牽引して、大きな成果を上げてきました。近年は腸内細菌に領域を広げ、無菌動物飼育施設を新たに設置して、腸管だけでなく多臓器に渡る臓器相関の解明を目指して研究を行っています。 

再生グループは、佐藤准教授が開発した幹細胞培養技術(Organoid)がまさに世界的に注目を集めており、この技術を応用した研究を精力的に行っています。炎症性腸疾患などの難治性腸管疾患だけでなく、あらゆる消化器系の臓器や腫瘍モデルなども作成し、解析することによって、発がん機構の解明や治療の有効性予測への活用などを目指しています。 機能グループは、上部消化管グループと共同で腸内細菌から見た機能性疾患の病態解明に取り組むと共に、糞便微生物移植法による機能性疾患治療法開発にも取り組んできました。 さらに、これまで科学的な検討が加えられることが少なかった生薬を炎症性腸疾患治療に応用することに加えて、その詳細なメカニズムとさらなる臨床応用の可能性についても精力的な検討を進めています。 

過敏性腸症候群を代表とする機能性疾患は現在患者数が増えていますが、まだまだ解明されていないことも多い分野です。我々のグループでも免疫や再生分野で培ったノウハウをもとに機能性疾患の研究にも取り組んでいきたいと考えています。 

本物の基礎と臨床の橋渡し研究(Translational research)に没頭したい人、炎症性腸疾患の臨床の醍醐味をとことん味わいたい人、興味を1つに絞り切れず幅広い視野で学びたい人、そんな人たちを私たちは待っています! さあ、基礎・臨床のエキスパートのスタッフととともに、新たな可能性を手にしましょう!