免疫グループ


1. 炎症性マクロファージを標的とした肝疾患の病態解明

これまでにマウス急性肝障害、肝線維化・肝硬変モデル、急性肝炎患者末梢血検体を用いて、ケモカイン受容体の一つであるCCR9陽性マクロファージが各病態の進展に促進的に関与することを明らかにしてまいりました(Gastroenterology 2012, Hepatology 2013, Frontiers in Immunology 2014)。


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現在脂肪肝、脂肪性肝炎(NASH)の発症や発癌過程における本細胞の病態への関与を検討中であり、CCR9、およびそのリガンドであるCCL25の治療標的としての可能性を今後検証していく予定です。



2. 肝疾患病態における腸内細菌叢をはじめとする臓器間ネットワークの関与

近年の解析技術の進歩により、数多くの疾患が腸内細菌を中心に規定されていることが明らかになってきました。腸管外臓器である肝臓も例外ではなく、様々な肝疾患の病態に腸肝相関を介した腸内細菌の関与が報告されています。さらに交感神経や副交感神経を介した腸脳相関や脳肝相関の関与も知られており、複数の臓器を経由する臓器間ネットワークを介して肝臓内の免疫応答・免疫寛容が制御されていることが予想されます。


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現在腸管除菌モデル、神経遮断モデルなど複数のモデルを用いて、各肝疾患の病態における臓器間の相互作用をマウスレベルで検討しています。さらに、脂肪性肝炎、アルコール依存症、肝硬変など各肝疾患患者の糞便サンプルを用いた、①腸内細菌叢のメタゲノム解析、②無菌マウスへの移植によるヒト腸内細菌フローラ定着マウスの作製を行い、ヒト腸内細菌と肝臓内免疫細胞の直接的な相互作用を検証しています(慶應義塾大学倫理委員会20140211, UMIN000018068)。本研究の成果により、難治性肝疾患の病態に寄与する腸内細菌叢の同定と治療標的としての可能性を解明できると考えています。



3. プロバイオティクスの抗炎症作用の解明

プロバイオティクス(整腸剤など)が腸管免疫に及ぼす影響は明らかになっていないことが多く、臨床現場では盲目的に使用されていました。我々は、既に臨床応用されているClostridium butyricumが、マクロファージのIL-10産生を誘導することにより腸炎を抑制する機序を明らかにしました(Cell host & microbe 2013)。


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さらに、樹状細胞を刺激してTGF-産生を促し、炎症抑制作用を発揮する機序も明らかにしました(Immunity 2015)。
現在は、プロバイオティクスが腸管外臓器に与える影響について検証を重ね、腸内細菌叢を中心に置いた多臓器相関の解明を目指しています。さらに、プレバイオティクスと呼ばれる食物繊維などが腸内細菌叢の構成や腸管免疫に与える影響についても、メタゲノム解析を含めた検討を進めています。


4.粘膜免疫における免疫担当細胞の挙動の解明

腸管炎症におけるkey playerであるT細胞のうち、ヘルパーT細胞はTh1/Th2細胞に分類されることが知られていましたが、近年Th17細胞と呼ばれる細胞群が重要な役割を果たしていることが明らかになってきました。しかし、これらの細胞群の分化経路の詳細は不明な点が多いのが現状です。我々は、元来ナイーブT細胞から直接分化すると考えられていたTh1細胞の中に、Th17細胞を介して分化する一群が存在することを明らかにしました。さらに、制御性T細胞はこの分化経路を抑制することによって腸炎抑制作用を発揮していることも明らかにし、これらの機能が腸管炎症の維持に重要な役割を果たしていることが示されました(Gastroenterology 2011)。
現在は、皮膚炎が腸管免疫担当細胞や腸内細菌叢の構成に与える影響を含めた全身疾患と消化管障害の関連について検証を進めています。