消化器内科座談会

座談会:慶應義塾大学の消化器内科ってどんなところ?


☆若手医師の先生方を中心に、慶應消化器内科医局の雰囲気を語り合ってもらいました☆


《司会》

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浜本 康夫:
卒後22年目。札幌医科大学卒業。
がん拠点病院を経て、現在慶應義塾大学消化器内科講師として
腫瘍を専門に診療。腫瘍グループに所属。



《参加者》

別所 理恵子:
卒後14年目。北里大学卒業。
慶應義塾大学関連病院で1年目から5年目まで研修。6年目で慶應義塾大学消化器内科入局。
IBD(炎症性腸疾患)グループに所属。育休後、慶應大学育児支援プログラムを経て復職。


宇賀村 文:
卒後6年目。浜松医科大学卒業。
慶應義塾大学で初期研修(1年目;関連病院、2年目;慶應大学病院)。3年目に慶應義塾大学内科学教室入局。
4年目は関連病院に出向。5年目に消化器内科入局。肝臓グループに所属。


玉川 空樹:
卒後6年目。東北大学卒業。
宮城県の市中病院で1年目から4年目まで研修。 5年目に消化器内科に入局。胆膵グループに所属。


吉松 裕介:
卒後6年目。慶應義塾大学卒業。
慶應大学関連病院で2年間初期研修。3年目に慶應義塾大学内科学教室入局。4年目は関連病院出向。
5年目に消化器内科入局。IBD(炎症性腸疾患)グループに所属。


福田 知広:
卒後6年目。北里大学卒業。
1年目から4年目まで慶應大学の関連病院で研修。5年目に消化器内科に入局。
IBD(炎症性腸疾患)グループに所属。


*慶應義塾大学内科後期研修:1年間の大学病院での内科全科ローテート後、関連病院でさらに1年研修を行う。



【慶應の消化器内科を選択した理由】



浜本:

まずは慶應の消化器内科を選んだ理由を教えてください。


別所:

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私は関連病院で初期研修2年を、そのまま同じ病院の消化器内科で後期研修3年を受けました。終了時に慶應の医局よりお誘いを受けて6年目から入局しました。








福田:

4年目までは入局自体考えてなかったのですが、5年目以降の進路を考えてみて、環境を変えてみようと思ったのがきっかけで大学病院を見学に行ったりしました。それまで働いていた病院は慶應の関連病院だったので、お世話になった先輩の勧めがあって説明会に来たのがきっかけで5年目で入局しました。


浜本:

そういう出会いって大切だよね。実際見学してみてどうだった?


福田:

慶應はどっちかというと外部からの人に冷たいイメージがありましたけど、病院を見学させてもらったり、説明会で話を聞いてみたりして意外とそうでもないな、と思いました。もともとIBDをやりたいと思ったのも慶應を選んだ理由の一つです。


浜本:

4年間同じ病院で研修してからの入局はどうでしたか。


福田:

2年間後期研修として市中病院に残って良かったことは、一番は内視鏡をはじめとして手技をたくさん経験できたことだと思います。初期研修と同じ場所だったので病棟やオーベンの先生にも慣れていて働きやすかったのも良かったですね。逆に悪かった点は3年目に(慶應内科プログラムとして)内科ローテートをした同期に比べて内科全般の知識がちょっと足りないな、と感じます。


浜本:

同じように4年間同じ病院にいた玉川先生はどうして慶應の消化器内科を選んだのですか?


玉川:

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5年目の研修先を考えているときにレジナビで慶應義塾大学の消化器内科の説明を聞いて興味を持って見学に来ました。もともと慶應は慶應卒以外に興味がないのではと思っていました。でもレジナビに行ってみると慶應大学の消化器内科のブースがあって「慶應も他大学に興味があるのかもしれない」と思って見学に行くことにしました。実際に行ってみたところ、色々な先輩がいて、金井教授から色々な出身大学の先生が来てほしいと言われ非常にオープンな雰囲気の医局だなと感じて入局を決めました。また消化器内科の胆膵領域を専門にしたいと思っていたので、胆膵の内視鏡治療など大学でなければできないようなことをやっていたというのも理由です。


浜本:

人とのつながりやきっかけは大事ですね。


宇賀村:

私は神奈川県出身だったので初期研修から関東での就職を希望していました。学生時代に慶應大学病院の見学に来て、初期研修から慶應で研修したのが大きいです。研修医時代は内科と外科で迷いましたが、研修医2年目のときに大学で消化器内科と消化器外科をローテートして最終的に消化器内科に決めました。なので、そのまま3年目から慶應の内科学教室に入局して内科の後期研修プログラム(1年間の大学の内科全科ローテートと1年間の関連病院出向)を経て、消化器内科に入局しました。


浜本:

慶應大学を卒業した吉松先生は慶應の消化器内科に入局したのは自然な流れかな?


吉松:

基本的にはそうですね、あまり他の大学ということは考えませんでした。ただ初期研修先の病院になんでも(ESD,ERCP,TACEなど)こなしてしまう他大学出身の先生がいらっしゃって、その先生に憧れて、もう1年初期研修病院に残ることは少し考えました。ただ、消化器内科に決めきれていなかったこともありましたが、なにより同じ環境で馴れ合いになるよりも、大学という違う環境でアカデミックに幅広く学ぶことを希望して大学病院の内科医局に入局しました。



【出身大学の差について】



浜本:

出身大学による差を感じることはありますか?


宇賀村:

ないですね。確かに入る前は出身大学によって区別されるのではないかという不安もあったのですが、実際に入ってみると初期研修では私のような他大学出身者がほとんどでした。


浜本:

色々な人が混じっていて良いですよね。逆に慶應出身者から見て他大学出身者とで扱いの差異を感じることはありますか?


吉松:

感じませんね。まだ未熟なので指導してもらうことは多いですが、理不尽なことはないです。多様な観点から議論ができて勉強になります。


浜本:

医局の雰囲気はどう?


福田:

雰囲気はとても良いと思います。同学年は10人いて和気あいあいと仕事できます


別所:

私を含め、医局員の半分くらいは他大学出身でしょうか?思っていたよりもオープンな医局でした。


玉川:

非常に雰囲気のよく仲のいい医局ですね。日中の仕事は全力で真剣にやるのはもちろんですが、仕事が終われば同期と飲みに行ったり、上司と勉強会に行ったり楽しくやっています。うちの同期は飲みに行き過ぎだともっぱらの噂のようですが...。若手とスタッフの机は壁を隔てて分かれていますが、聞きたいことがあればすぐに聞きに行くことができますし、教授はよく医局で若手とディスカッションしています。


浜本:

飛び込んでみないと雰囲気はわからないでしょうけど、だいたいの先生が入ってみるとイメージが変わるみたいですね。



【入局してよかったことは?】



浜本:

医局に入ってよかったことは何ですか?


福田:

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アカデミックかつ内科的に物事を考えて診療に当たるということを学べたことが大きいと思います。市中病院の時も全く考えていなかったというわけではないですけど、ひとつの症例をカンファレンスなどできちんと議論しあうという環境というのは大学ならではのものではないかと思います。しっかりと考える診療を学ぶ事こそ自分の今後の財産になっていくと思います。







玉川:

おおむね同じ意見です。僕の場合は地方の中核病院だったので病棟業務と手技など実働がメインで病態についてじっくり考える時間を取ることはあまりできませんでした。大学病院ではまず病態をじっくりと考えることができ、非常に勉強になります。それだけに大学特有の難しい病態の患者も入院しているということでもあるのですが。10年後の自分を考えると、この医局で勉強することによって骨太な臨床力がつくのではないかと思っています。


吉松:

忙しい中、スタッフの先生はもちろん若手の先生もすごく親切に教えてくれます。先輩方それぞれが専門的なことを把握しており、知識として困ることがほとんどありません。


浜本:

僕も外から慶應に来たけど、閉鎖的な大学病院のイメージと違って情熱的に学術的に突き詰めて医療をしているという印象があるね。


別所:

各分野でトップの先生の話を直に聞けること。どのグループも日本のトップレベルにあり、多岐に渡る症例を目の当たりにできることはここでしか出来ない貴重な経験だと思います。また、特に女性にとっては働き方を選べること、その選択肢が多いことは大事だと思います。この医局ではその点を十分配慮してくれていると思います。



【手技の習得に関して】



浜本:

ところで手技の習得に関しては、どうでしょうか?物足りないですか?


吉松:

いえ、外の病院で予想していたイメージよりは意外と手技に関わる機会は多いですね。僕はスクリーニング検査の内視鏡などは市中病院と同じくらいにやっています。


浜本:

飛び込んでみないと雰囲気はわからないでしょうけど、だいたいの先生が入ってみるとイメージが変わるみたいですね。


宇賀村:

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実際に全てを自分たち(若手医師)でやるわけではありませんが十二指腸の内視鏡治療(ESD)など大学特有の手技がありますね。またスクリーニング検査ひとつでも1人当たりの件数そのものは多くはないかもしれませんが、大学では教科書や雑誌を執筆・編集されている先生方に学べるため、知識的にも手技的にも基本を改めて勉強できています。









浜本:

確かに大学は市中病院に比べれば手技は多くはないですよね。ただ同じ環境だとマンネリになったり自己流になりがちになるうえに、学べる疾患に偏りが出てきやすいですね。大学ではスタッフも疾患も多くて幅広く勉強できるでしょうね。


玉川:

胆膵領域ではEUS-FNAやEUS下の膿瘍ドレナージやネクロセクトミー、経口胆道鏡、乳頭切除術などある一定以上の大きさの施設でないとやっていないようなことを経験できて非常に楽しくやっています!



【将来の目標について】



浜本:

将来はどのような医師を目指していますか?


福田:

もともとIBDをやりたくて慶應を選んだというところもあるのですが、慶應はIBDの症例も多いので、大学にいる間にIBDの臨床を学んで、将来的に関連病院に出た時にそれが活かせるようになりたいです。


吉松:

同じくIBDグループで今大学院生なので(今年を入れて)あと4年は大学に残っています。基礎研究は、始まったばかりで分からないですが、その結果如何を問わず、僕の将来の展望としてはしっかり考えるトレーニングをしてから臨床医として幅広く診られる消化器内科医を目指しています。


玉川:

大学にいる間は基礎研究もしっかりとやりたいと思っていて、今はがんの基礎研究をしています。将来的には胆膵内視鏡をメインとして何か新しい治療開発などをしたいと考えています。


宇賀村:

私は大学院生ではないので基礎研究に携わってはいませんが肝臓グループとして大規模施設ならではの劇症肝炎などを中心に臨床研究をやっています。将来的にはそれを生かして実臨床に携わりたいと思っています。


浜本:

基礎だけでなく臨床の分野でも国内留学で勉強している人もいるしね。



【後輩に向けてメッセージ】



浜本:

最後に後輩に向けて何かメッセージはありますか。


吉松:

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若手医師として手技の量だけを求めるのであれば一般市中病院にかなわないかもしれません。ただ研修医を終えて上の世代に立つと一般病院では教えてもらう立場もすぐに終わってしまいます。アカデミックさはもちろんのこと、教授をはじめフレンドリーな雰囲気で活気にあふれています。実際に僕らは同期で平日の夜にみんなで食事にいったり休日中は適宜病棟管理をチーム制で分け合いながら遊んだりすることもできていました。今の医局は若手が多く馴染める環境が整っていると思います!






福田:

他の大学病院は実際に働いたことはないのでなんともコメントしがたいですが僕は慶應に入局して良かったと思います。教授は「いつも多様性が大事だ」と言っていますが、この医局は卒業大学も様々、専攻している領域も上部・下部・腫瘍・肝臓・胆膵・内視鏡と様々、研究スタイルも免疫ユニットや再生ユニット、腫瘍ユニット、機能ユニットと様々で、とてもエキサイティングな教室という感じです。大学病院の堅苦しい雰囲気はありませんし外部からの入局者はむしろ大歓迎なので、ぜひ一度見に来てください!


宇賀村:

臨床と基礎とのバランスが良いのが慶應の良いところと思います。大学病院としてはとても雰囲気よく、消化器内科の中だけでなく、他科を含めて壁はなく楽しくできます。まずは気楽に見学に来てもらって中から見てほしいです!


別所:

我々の医局には女性医師もコンスタントに入局してくれています。全身を診ることが出来る、手技を体得出来る、実験に没頭することも出来る、そんな科ですので女性医師もライフスタイルに合わせて様々な活躍の場があると思います。私自身、いつの間にか中堅になっておりますので、私の経験を踏まえ若い先生の相談相手になれたら嬉しいです。


玉川:

私自身、慶應と全く関係のないところから来ています。ですから「慶應は私学だから排他的」のようなイメージも分かります。ですが実際は全くそんなことはないので、少しでも興味を持ってくれた方は一度見学に来てみてください。きっと医局の雰囲気の良さに惹かれると思います。一緒に楽しく真剣に仕事をできるのを楽しみにしています!



<病院見学を希望される方へ>
消化器内科では随時、病院見学を行っています。
慶應大学、消化器内科に少しでも興味がある方は、
ぜひ一度見学にいらしてください。
お問い合わせ先e-mail: shokakinaika@ml.keio.jp


2016年6月24日掲載