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留学便り

川田一郎先生 - 留学先:The University of Chicago

2013年3月まで呼吸器内科から留学されていた川田先生からのメッセージを紹介しております。
ぜひご覧下さい。

Q1 川田先生の経歴を教えてください

kawada1.JPG川田 一郎(かわだ いちろう)    

Research Professional Associate (Postdoctoral Fellow)
Department of Medicine
Section of Hematology/Oncology
The University of Chicago(シカゴ大学医学部血液・腫瘍科) 

1998年に慶應義塾大学医学部卒業し、慶應義塾大学医学部内科学教室に入局しました。埼玉県立循環器・呼吸器病センター、東京歯科大学市川総合病院での内科全般の臨床研修を修了。2002年に慶應義塾大学医学部呼吸循環器内科学教室に入局し、呼吸器内科全般の臨床に従事しながら、副島研造先生の指導のもと肺がんの研究に従事しています。2005年より東京都日野市立病院に呼吸器内科医として勤務しました。2010年1月から2013年3月まで、石坂彰敏前教授、別役智子教授のご高配によりシカゴ大学に留学の機会を与えていただきました。帰国後、東京都済生会中央病院にて勤務させていただき、現在慶應義塾大学医学部呼吸器内科学教室に所属させていただいております。 

Q2 川田先生の研究のテーマは?

kawada2.jpgシカゴ大学医学部血液腫瘍内科、Ravi Salgia(ラビ・サルジア)先生の研究室に留学させていただきました。Ravi先生は胸部腫瘍学、そしてチロシンキナーゼ細胞表面受容体METの研究の第一人者であると同時に、細胞接着斑分子(細胞骨格に関係する蛋白質)であるパキシリン(paxillin)の遺伝子のクローニング、配列決定を行いました。胸部腫瘍学の臨床医であり、病院の仕事を行いながら、肺がん、食道がん、悪性中皮腫の研究も行っております。

最初の私のテーマは、"パキシリンの異常と肺がんの関係"についてでした。ミトコンドリアとの観点からも検討し、「肺がんにおけるパキシリン遺伝子変異とミトコンドリアダイナミクスの関係」として報告しました(Cancer Biol Ther. 2013; 14: 679-91)。また、"MET/RON(チロシンキナーゼ細胞表面受容体)と非小細胞肺がんの関係"について研究し、「MET/RON二重低分子阻害剤(Dual Small Molecule Inhibitor)の非小細胞肺がんに対する効果」として報告しました(Cancer Research. 2014; 74: 884-95)。

ラボには、アメリカをはじめ、インド、バングラデシュ、プエルトリコ、台湾、ドイツ、リビアなど、様々な国籍の研究者がいました。メンバーの圧倒的なプレゼンテーション能力、要領のよさ、結果を出そうとする姿勢に驚きました。一方、彼らの大雑把な点も時に感じ、自分とはスタイルが違うと思うこともありました。自分は実験内容、データをこと細かく記録することから始めました。失敗のときの状況も細かく必ず記録し、何が起きたのかわかるようにします。失敗により気持ちも進まず、非常に面倒で時間の浪費と感じてしまうこともありますが、後で見直してみて、要点がみえてくることがわかりました。この記録をもとにして実験を進めることで、見落としもなくなり、再現性のある確かな結果を出しやすくなりました。2年が経つ頃には、実験がうまくいく条件を、みんなが自分のところに確認しにくるようになりました。

留学3年目となる2012年は、あっという間の1年でした。2012年4月のAACR(米国がん学会)に副島研造先生、安田浩之先生、扇野圭子先生、浜本純子さんが、6月のASCO(米国臨床腫瘍学会)に猶木克彦先生、依田聡先生、荒井大輔先生が来てくださいました。日本から先生方の激励をいただき、本当に嬉しかったです。

Q3 留学中に経験した楽しかったこと・つらかったことは?

kawada4.jpgシカゴはニューヨーク、ロスアンゼルスに次ぐアメリカ第3の都市です。大都市ならではの様々な文化に触れることができました。世界最高のオーケストラの1つとされる、シカゴ交響楽団を生演奏で何度も聞くことができ、感激しました。東側にミシガン湖が広がり、湖から吹き込む風がビルの間を抜けるため、"風の町 Windy City"と呼ばれています。長い厳しい冬でしたが、夏は爽快でドライブは最高でした。

海外生活において、まず一番大切なことは、無事で大きな問題もなく過ごせることと思います。このため留学前後の準備、セットアップには相当なエネルギーの集中が必要です。文化や言葉の違いから苦労することもありましたが、新しい世界から受ける刺激は、毎日の疲れを忘れさせる程、強いものでした。家族にとっても多くの試練はありますが、力を合わせてのりこえることによって生み出される絆と自信は、大変大きな財産となりました。留学させていただきましたこと、そしてこのようなすばらしい環境で研究させて頂きました事に感謝致します。

Q4 最後に入局を考えている方へメッセージをお願いします

慶應義塾大学医学部呼吸器内科は皆情熱をもって臨床・研究に励んでいます。病態の解明から治療法に至るまでのプロセスを理解すること、そしてこれを自分たちの手で世に送り出すことは、臨床医としても非常に大切です。呼吸器疾患で苦しまれている方に少しでもよい医療を届けられるよう、一緒に頑張っていきましょう。医局員一同お待ちしております。

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