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Achievements

当科・田中拓先生の論文がInfect Drug Resistに掲載されました。

題名

 Development of Rheumatoid Arthritis in Cavitary Mycobacterium avium Pulmonary Disease: A Case Report of Successful Treatment with CTLA4-Ig (Abatacept)

邦題

 空洞を伴う肺非結核性抗酸菌症に関節リウマチが発症し、アバタセプトによる治療を導入できた1例

著者

慶應義塾大学医学部 呼吸器内科 田中拓

掲載ジャーナル

Infect Drug Resist. 2022 Jan 11;15:91-97.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35046674/

論文要旨

 

症例報告、本症例は62歳女性。血痰を契機に肺非結核性抗酸菌症(NTM-PD)と診断され、多剤抗菌薬治療を行っていたが、治療の過程で起因菌のMycobacterium aviumはマクロライド耐性を獲得していた。治療開始5年目に、患者は手指や手首の関節痛の自覚を契機に関節リウマチ(RA)と診断された。当初はメトトレキサート、プレドニゾロン等が投与されるもRAの活動性は悪化した。その一方で合併するNTM-PDに関しては、M. aviumがマクロライド感受性株に変化し、空洞病変を伴うものの喀痰からの排菌が抑えられていた。そこでRAに対して、生物学的製剤であるアバタセプトの使用を開始したところ、RAの活動性を大きく改善することができた一方で、抗菌薬治療の併用下でNTM-PDの悪化を軽度にとどめることができ、呼吸器症状は安定した経過をたどることができた。

気管支拡張症を伴うNTM-PDでは、同じく気道病変を発症しえるRAの潜在に気づきづらいことがあり、長期の経過であっても臨床医は気管支拡張症の病因に留意する必要性がある。RAとNTM-PDの合併報告は多く、生物学的製剤の使用に関しては慎重を要するが、空洞病変が残存している場合においてもアバタセプトをRA患者への選択肢にできる可能性を示した

本論文の与えるインパクトや将来の見通し

本報告は、NTM-PDを長期に治療している中で、同じく気道病変を伴う疾患であるRAの発症を認めた症例報告になる。RAとNTM-PDの合併報告は多く、生物学的製剤の使用の是非については症例ごとに総合的なリスク・ベネフィット判断が求められており、呼吸器内科医の重要な命題である。空洞病変を伴うNTM-PDは予後不良とされ、生物学的製剤の使用には懐疑的な意見もあるが、喀痰検査や肺病変の進行度合い、菌の薬剤感受性、使用する生物学的製剤の種類、期待できる治療効果などを総合的に判断することで、本症例のように治療に成功しえる症例がある。今後も、同様の症例報告の蓄積と、NTM-PD合併患者への生物学的製剤の安全性および危険性に関する知見が集まることが期待される。


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