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Achievements

当科・田中拓先生の論文がBMC Pulm Medに掲載されました。

題名

 Osteoporosis in nontuberculous mycobacterial pulmonary disease: a cross-sectional study

邦題

 日本人肺非結核性抗酸菌(NTM)症における骨粗鬆症の併存頻度と危険因

著者

慶應義塾大学医学部 呼吸器内科 田中拓

掲載ジャーナル

BMC Pulm Med. 2022 May 21;22(1):202.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35596169/

論文要旨

  肺非結核性抗酸菌症(NTM-PD)は本邦において罹患率が上昇している慢性炎症性肺疾患であり、骨粗鬆症のリスクのある中高年の痩せた女性に多いことから、骨代謝との関連性があるものと仮定した。本研究では、NTM-PD患者における骨粗鬆症の有病率を一般集団と比較して評価し、血清エストラジオール(E2)および25-ヒドロキシビタミンD(25OHD)濃度など、骨粗鬆症に関連する因子を明らかにすることを目的とした。

慶應義塾大学病院における前向きコホート研究から、2017年8月から2019年9月にかけて、骨粗鬆症や関連する骨折既往がなく、DXA法による骨密度評価を受けたNTM-PD患者228名を対象とした。このうち、保存済みの血清サンプルが入手可能な165名の患者では、E2および25OHD値を測定した。T scoreにより骨減少症および骨粗鬆症を定義し、その関連因子を評価すべく多変量ロジスティック回帰分析を行った。

結果として、NTM-PD患者の35.1%に骨粗鬆症、36.8%に骨減少症を新規に指摘できた。本邦における既報の一般集団と比較して、50-79歳の女性のNTM-PD患者では骨粗鬆症の割合が有意に高かった。多変量解析により、高齢(aOR = 1.12; 95%CI = 1.07-1.18)、女性(aOR = 36.3; 95%CI = 7. 57-174)、BMI低値(aOR = 1.37; 95%CI = 1.14-1.65)、および慢性緑膿菌感染(aOR = 6.70; 95%CI = 1.07-41.8)が骨粗鬆症の独立関連因子として明らかになった。血清E2値と25OHD値が測定された165名の患者における多変量解析では、E2低値と25OHD低値の双方が、骨粗鬆症の独立関連因子であることが示された。

以上より本研究の結論として、NTM-PDの中高年女性は一般集団に比べて骨粗鬆症の有病率が高いことがわかった。またNTM-PD患者では、特に慢性緑膿菌感染症の合併があるような重症例で、BMIが低く、血清E2値や25OHD値が低い高齢女性において特に、骨密度スクリーニングを考慮する必要があるものと考えられた。

本論文の与えるインパクトや将来の見通し

本研究では、日本人NTM-PD患者における骨粗鬆症の併存頻度の高さ、およびその関連因子について明らかにすることができた。閉経後のやせ型女性はNTM-PD患者の典型像であるが、本研究からこの患者群は骨粗鬆症の併存頻度が高く、多くのNTM-PD患者に未指摘の骨粗鬆症が潜在している可能性を示唆した。NTM-PDを含めた慢性炎症性肺疾患と骨代謝の関係性については、基礎研究からのさらなる知見が今後期待されるものと考える。


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