HOME ›  Achievements ›  当科 竹原朋宏先生の論文がCommunications Biologyに採用されました

Achievements

当科 竹原朋宏先生の論文がCommunications Biologyに採用されました

題名

PD-L2 suppresses T cell signaling via coinhibitory microcluster formation and SHP2 phosphatase recruitment

邦題

PD-L2は抑制性マイクロクラスターを形成し、フォスファターゼSHP2をリクルートすることでT細胞シグナル伝達を抑制する

著者

慶應義塾大学医学部 呼吸器内科 竹原朋宏

掲載ジャーナル

Communications Biology

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33990697/

論文要旨

免疫チェックポイント阻害薬の一つである抗PD-1抗体は、T細胞中のPD-1と腫瘍中のリガンドPD-L1との結合を阻害し、PD-1からの抑制シグナルを解除し、T細胞を疲弊状態から回復させる。これまでPD-1のリガンドとしてPD-L1が専ら注目され、もう一方のリガンドPD-L2の研究はあまりなされていなかった。しかし近年、PD-L2を優位に発現している癌腫が次々と報告されており、PD-L2を介したPD-1シグナル伝達の研究が期待されていた。

抗原提示細胞の細胞膜を模倣した人工平面脂質膜と超解像顕微鏡を融合した先端的イメージングシステムを用いて解析した。その結果、PD-1はPD-L2と結合することで、数十個のPD-1分子がT細胞上に集積し、TCRを巻き込んでクラスターを形成した (図)。PD-1クラスターはT細胞抑制の誘引となる脱リン酸化酵素SHP2を呼び寄せ、T細胞のサイトカイン産生を抑制することを示した。観察された抑制性PD-1マイクロクラスターに各種モノクローナル抗体を加え、これまで効能の直接比較がなされていない種々の抗PD-1抗体を、PD-1マイクロクラスターの崩壊およびサイトカイン産生の観点から再評価することによって、クローンによる中和能の違いが明確となった。

最後に、PD-L1とPD-L2が共に存在するような実際の腫瘍環境を再現し、両方のリガンドのPD-1への分子間競合をイメージング解析した。PD-1への結合力が強いPD-L2は、PD-L1とPD-1の結合を阻害して優先的にPD-1に結合したことから、PD-L2はPD-1シグナルに専属的に寄与し、より効果的にT細胞を疲弊させる可能性が示された(下図)。図1.jpg

図2.jpg

本論文の与えるインパクトや将来の見通し

本イメージングシステムを用いて抑制性PD-1マイクロクラスターの挙動を観察することは、新規開発抗体薬が適切にがん免疫サイクルを抑制することができるかのドラッグスクリーニングとして強力なツールであると期待される。


トピックス

  • 同門会(要パスワード)
  • サタデーレクチャー(要パスワード)
  • 寄附講座
  • 患者様へ 臨床研究について

page top


Copyright(c) 2024 Keio University Hospital. All rights reserved.