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Achievements

当科 小林慧悟先生の論文がBiochem Biophys Res Communに採用されました

題名

Functional Dissection of the KRAS G12C Mutation by Comparison among Multiple Oncogenic Driver Mutations in Lung Cancer Cell Line Model

邦題

肺癌細胞株における複数のドライバー癌遺伝子の比較によるKRAS G12C変異の機能的分析

著者

慶應義塾大学医学部 呼吸器内科 小林慧悟

掲載ジャーナル

Biochemical and Biophysical Research Communications

論文要旨

本研究では、KRAS-G12C特異的阻害薬AMG 510の薬剤耐性機序の解明のため、BEAS2B細胞(ヒト気道上皮細胞)にpLVSIN-EF1α-IRES-ZsGreen1(レンチウイルスベクター)を用いて3つのdriver癌遺伝子 (EGFR-L858REML4-ALKKRAS-G12C)を導入し、各driver癌遺伝子の生物学的特徴を比較するモデルを作成した。その結果、KRAS-G12Cを導入したBEAS2B-KRAS-G12C細胞で浸潤・転移能が亢進することが判明した。さらにそれらをヌードマウスに皮下移植したところ、BEAS2B-KRAS-G12Cを移植したマウスで形成された腫瘍(肺癌)はEGFREML4-ALKを移植してできた腫瘍と比較して、増大速度が明らかに亢進していた。次にこれらマウスにできた肺癌組織を用いてRNA seqを行ったところEGFREML4-ALKと比較してKRAS-G12Cでは複数の遺伝子が高発現していることが判明した。AMG 510を投与することで、これら高発現していた遺伝子群は軒並み発現を低下させたもののInsulin-like growth factor 2IGF2)という遺伝子のみがAMG 510の投与によりさらに発現を亢進させた。そこでIGF2の受容体であるInsulin-like growth factor 1 receptorIGF1R)を阻害する薬剤LinsitinibAMG 510を併用したところ、肺癌細胞が相乗効果を持って死滅することが確認できた。以上からAMG 510によりIGF2の発現が増加し、それがIGF2-IGF1R 経路を通してPI3K 経路に細胞増殖シグナルを伝達する可能性を考えた。またこのことがAMG 510の薬剤耐性機序の一つではないかと考察した。さらにこの薬剤耐性を回避する方法としてAMG 510Linsitinibの併用療法を提案した。

本論文の与えるインパクトや将来の見通し

本研究は、AMG 510の薬剤耐性機序の一部を解明しただけではなく、これまで肺癌の分子標的薬に関する研究ではマウス由来のBa/F3細胞しか用いられていない中、ヒト由来のBEAS2B細胞を用いたモデルを作成したものである。


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