研究紹介(多発性硬化症/視神経脊髄炎)

1)多発性硬化症の原因を探る研究

キーワード:グリア変性、髄鞘再生不良、TIP30

多発性硬化症の原因は未だ明らかになっておらず、その病理病態の理解も不十分です。私達は多発性硬化症の原因及び病理病態を更に追究することがより良い治療に繋がると考え、研究を行っています。

これまでのところ、多発性硬化症では「炎症性脱髄」と「神経変性(脳萎縮)」の二つの病理が確認されていました。これら二つに加えて、私達は多発性硬化症では「グリア変性(髄鞘再生不良)」という病理が生じていることを発見し、その原因がTIP30分子であることを世界で初めて発見しました。TIP30分子は多発性硬化症の原因や病理病態に深く関与していると考えられます。TIP30を制御する技術が開発されれば、多発性硬化症の新たな治療戦略に繋がると考えられ、現在研究を行っています。

参考文献:

2)多発性硬化症/視神経脊髄炎に対する再生治療を探る研究

キーワード:髄鞘再生療法、FcRγ、髄鞘脂質

私達の脳脊髄では神経による電気的なネットワークが縦横無尽に構築されています。髄鞘は神経線維を被包することでこの構築を支えています。多発性硬化症及び視神経脊髄炎では髄鞘が破壊され(脱髄)、その結果として神経活動に障害が生じ、様々な神経症状を呈します。現在の治療法はいずれも新たな脱髄を防ぐこと(再発予防)が主たる目標となっており、後遺症を回復させる治療薬は開発されていません。私達は、髄鞘を再生するための新しい治療戦略(髄鞘再生療法)を開発するべく研究を行っています。

私達はヒト脳脊髄には髄鞘を再生するために活用できる未熟な細胞(OPC細胞)が多数存在することが確認しました。そこで、これらOPC細胞を薬剤で刺激することで髄鞘再生を促進することを目指し、そのための治療標的となるタンパク質がFcRγ分子であることを世界で初めて特定しました。現在は具体的な治療薬を設計するための研究を行っています(日本国特許第4214249号、米国特許第7901678号)。さらに新しい戦略として、髄鞘再生に際して、より頑丈な髄鞘が構築されるよう、髄鞘脂質に着目した研究も同時に行っています。

参考文献:

3)多発性硬化症/視神経脊髄炎の新たなMRI撮影方法を探る研究

キーワード:MRI、ミエリンマップ、髄鞘可視化

日々の診療におけるMRI(核磁気共鳴画像)の重要性は近年増してきています。特に脱髄疾患である多発性硬化症や視神経脊髄炎の診断及び治療においてMRIは今や欠かすことはできません。しかしながら、現状のMRI撮影法は必ずしも万全とはいえず、更なる改良が必要です。多発性硬化症や視神経脊髄炎のMRIにおいては、一般的にT2強調画像における高信号領域を「脱髄病変」と判断し診断や治療を行っていますが、これは必ずしも正しくありません。また、患者さんの症状が回復しているにもかかわらず、MRIでは改善が認められないことはしばしば経験されます。これらはMRIの撮影方法が髄鞘の状態を正確に反映しないことが理由です。

私達は髄鞘の状態を正確に反映したMRI技術を開発するべく、本学整形外科・生理学教室・放射線科との共同研究を実施しています。現在、新しいMRI撮影方法である「ミエリンマップ」が完成しつつあり、臨床研究を精力的に実施しています。このような新たな技術により髄鞘を可視化することができれば、現状の脱髄や髄鞘再生を詳細に把握し、それらに基づく治療薬の選択にも応用可能と考えられ、研究を行っています。

参考文献: